2022/6/2「銀河英雄伝説 Die Neue These 激突」第3章 スタッフトーク「原作」田中先生回!いってきました(ネタバレあり)
2022/6/2「銀河英雄伝説 Die Neue These 激突」第3章スタッフトーク、「原作」で田中先生が登壇されました!
当日Twitterでつぶやいた内容のまとめ、ネタバレありです笑。
たなか先生のお話メモ。銀英伝を書かれるきっかけとか、あちこちで読んだり聞いたりしてて多分皆知ってるテッパンネタなのに、それをこんなに面白く話せる先生すごい。
以下はあくまで個人的な備忘録メモです。私の聞き違い書き間違いあったら申し訳ありません。
今日の司会はたさかさん。さすがのたさかさんも第3章ではうまい注意事項が思い浮かばなかったということで、策謀でがんばる宣言をされてました。大ファンなので楽しみ😊
たなか先生登壇!ご挨拶はきちんとマクス外されて。
「暑いか寒いかよくわからない、雨がふるんだかふらないんだかわからない日に来て下さってありがとうございます」というご挨拶から先生の小説を読んでいるような気分。
「人前で話すのが苦手だから机の前で書いてればいい商売を選んだはずなのに、今はそんな時代じゃない、なにかしゃべれといわれてどうなっても責任もたんぞと参上しました」とのこと。
事務所には恨み、皆様には感謝。できるかぎり真面目に誠実につとめます、というお言葉が本当に真面目で誠実でしみます。
〇銀英伝を書いたきっかけ
SFという言葉がなく科学冒険小説といっていた時代、小松左京先生、星新一先生、光瀬龍先生の作品を読んでいた。こんなものを書く人がいるんだと。特に光瀬龍先生。これが源流。
大学の時懸賞金欲しさに懸賞小説に応募して入賞、賞金1万円のはずが予算がなくて現金書留のなかには8000円、世の中甘くないを知った。
大学院は論文を書く間は暇、雑誌の新人賞に応募。大学の雑誌に入賞できる力はあっても普通はどの程度読んでもらえるか?論文審査が始まるまでの2ヶ月で書き上げた。
送ったら、下宿でお葬式の時に廊下の電話がなり、幻影城から入賞したからねと連絡が。お坊さんが木魚を叩いてるのでやったー!という訳にもいかず、はあそうですか、と言ったら嬉しくないの?デビューできるんだよ、と。いま取り込んでますのであとで…と答える。1年半ほど短編を書いた。
長いもの書いたら出してやる、と言われ、宇宙物を書いていたら、同じ雑誌でデビューした先輩から、幻影城つぶれたよ、と電話が。えっではなくやっぱりと思った。
論文書いてたので構う間もなく翌年には大学院に入り、また書きたい欲が出てきたので、またどこかの雑誌に応募しなくてはと思っていたらとくまさんから電話。
あいつは使えそうだからと半年くらい探していたとのこと。
1冊長編書いたがさっぱり売れない。
全然別の物を書いてみて、ということで幻影城の原稿見せたら本編よりも前日譚、ラインハルトやヤンが出てくるほうが面白そうだからやろうと。
タイトル最初は「銀河三国志」というのであんまりだからちょっと待ってくれと。
二三日のつもりだったが1時間というので10くらい考えて提出。なるべく地味なのを選んで欲しいなと思ってたら、一番選んで欲しくないのを選ばれた。それが銀河英雄伝説。高い志はなくその場その場でやりたいものをやりたいように編集者をごまかしながら書いていた。
銀河英雄伝説書いたら多くの人が読んでくれて、続きにしようと言われたから、あれ一応終わってるとは言ったが続きを書くことに。とりあえず3巻というお話で、キルヒアイスを2巻で…。そしたら10巻になった。それ最初から言ってくれてたら2巻じゃなくてもう1、2巻…と。
最近若い人に(キルヒの早い退場を)言われると「鬼〇の刃でもれんごくさん早死したじゃない」と言う。
作品を書く時は1冊足りとも手を抜いた覚えはない。その場その場で全力尽くして書いた。40年もたって2度目のアニメ化がされて原作者のらくだらない話にまでつきあって頂いてありがとうございます。
〇3巻は全10巻でどういう立ち位置?
自分ではなかなかわからないが、あと1巻だったのが8巻になり、書く材料はたくさんあったが綺麗に着地できるように構成練り直してリスタートした巻。
〇〇は殺さないでという嘆願が来始めるが「すいませんね」と…。
ユリアンはお茶くみ坊やからそろそろ成長。
帝国はキルヒアイスの穴を誰が埋めていくか。要塞攻略も艦隊戦も書いたが、要塞対要塞は書いてない、貧乏性なのでガイエスブルク残ってるからもったいないとやることに。
ケンプとミュラー、プロ野球でもベテランとルーキーを組ませるので組み合わせは自然に決まった。
(ここで少しノイズ…「ケンプとミュラー。これが最終試合になるのと生き残って二軍から一軍、オールスターになるのと」スタッフさんで、大丈夫?大丈夫気づいてない、のやりとりが😂)
同盟側は、ヤンがいなくなったらこの連中はどうやってこの危機を乗り切るかが焦点。若手ばかりと事務屋さんでボスがもどってくるまで持ちこたえなければ。
亡命してきてくれたたのもしいおじさんがいる。
帝国から亡命してきた人が帝国と戦う流れ。
自分で考えてる通りには行かない、勝手に動き回るキャラといる、家庭ではケンプが良きお父さんであるのを書いたのはヤンを正義の味方にしたくないから、反対側から見たらこうだったと書きたかった
(ここも少しノイズが。「ケンプ家ではケンプは「悪いやつに殺された」となる」、でもこのヤンのくだりすごく良かった)
〇メルカッツから恵まれない状況から活躍する流れについて
流れより流されていく、まだまだアッテンボローも青いし、コーチ兼選手のような人が必要。メルカッツ、ここで完全に帝国と訣別できたと感じて頂ければありがたい。
〇メルカッツやシェーンコップ、亡命者が同盟の危機を救ったことについて
特にこれでもってどうってことはなかった。
残ってるメンツから考えて、メルカッツはこう、シェーンコップはこう、私の思う通りには行かない、彼らが自分で自分の役割を心得てて、役割を果たしていった。そんなプロを書いてみたかった。
〇査問会のイメージは?
大学院の論文の口頭試問。これが直接の体験。(ここで拍手)
間接的には、当時ソ連にスターリンがいて、トハチェフスキー、ソ連のナポレオンと言われる若い元帥を無実で捕まえて拷問、銃殺したこと。民主国家の場合はシビリアンコントロールだから文官が軍人を取り調べる。
弱みを握って大人しくさせる、そういうことは実際にあったし、これからもあるだろうとああいうふうにかいた。
〇キルヒアイスがいたらイゼルローンを攻略していた?について
キルヒアイスがもし生きていたら、というのはあった。戦術的にはいろいろあったが、キルヒアイスが破れたとしたら、ヤンはラインハルトにとってキルヒアイスの敵、相いれなくなっただろう。でもキルヒアイスだからこそ、負けと見込んで引き下がったかもしれない、悩む。
〇フェザーンのイメージについて
帝国同盟1体1だと敵味方が綺麗にわかれグレーゾーンが狭くなる。第三勢力が出て軍事力はないがこっちにあっちに味方して最終的には漁夫の利を得ようとする、そういうのがあるといいと。
どうしても戦闘シーンに引張され、諜報戦や経済戦争に手が届かなかった。1冊のページは限られているから、どっちを優先するかというとチャンバラになる。書き直す機会があったとしても、フェザーンはこのくらいに押さえておいたほうが皆様にも納得いただけるのでは。
〇フェザーンのキャラの厚み、ルパートについて
あれはぼく自身も考えてた。第三勢力としての魅力を与えるには、禿頭の親父ひとりじゃ訴求が弱い。美形っぽいのを入れるか、ルビンスキーは動かない、動くキャラがいる、ある程度カッコよく書こうかなと。
(ここでも「ルパートは禿頭が親父だった」とノイズ😂)
〇たなか先生のあらゆる作品の中で銀英伝とは
親孝行な子。よく仕送りしてくれる。
作家は学校の先生と同じところがあって、卒業生が活躍してくると嬉しい。今は目の前にいる遅刻したりカンニングしたりする子をなんとか卒業させないとと思っている。
活躍してる卒業生は遠くから眺めてるほうが邪魔にもならない。
〇策謀に期待するところ
期待でいっぱい。原作者なのにこの後どうなるんだろうと常にある。こちらの想定外をやってもらう方が嬉しい。銀英伝という私の作ったフィールドのなかで、アニメ関係者の方に思い切りプレイして欲しい。
見ていてこういうふうに解釈してくれたのか、というシーンも、これ忘れてた、というシーンもある。現役選手のプレイを待ちわびている。はよ次を出さんか、という感じ。感謝の気持ちでいっぱい。またそれを見て、銀英伝のあたらしい一面を見つけたと言ってくれるお客様にも感謝。
(ここでいきなり)
不満、違和感があるとしたら、ヤンはあんないい男じゃない!女性ファンがつかないと思ったから美人の副官出したのに。余計なことしたかなと。
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個人的にはたなか先生の声で「アッテンボロー」が聞けたのがとてもとても嬉しかった😆流れ的に、メルカッツがコーチ兼選手の立ち位置っていうのも熱かった。
シェーンコップがいかにも先生の思う通りに動かず好き勝手に動いてそうな感じがしたのも良かったな笑。
最後、「楽しんでください」とふかぶかと長くお辞儀をされる先生にこちらもつい頭がさがる。楽しいお話本当にありがとうございました!